【コラム第2回】 なぜ今RISC-V なのか?―オープン ISA が切り拓く半導体開発の新常識
目次
はじめに
1. RISC-V(リスク・ファイブ)の核心を3行で!
2. “今” 追い風が吹く 3 つの理由
3. 技術ビギナー向け:ARM と何が違う?
4. 活用シーンと具体例
5. Andes Technology と当社が提供できること
6. まとめ
7. 次回予告
はじめに

半導体業界を取り巻く地政学リスクやサプライチェーンの再構築が進むなか、オープンかつモジュラーな命令セットアーキテクチャ(ISA)「RISC-V(リスク・ファイブ)」が注目を集めています。
当社JFE 商事エレクトロニクスでも2025年7月よりAndes Technology Corporation(以下 Andes Technology)と販売エージェント契約を締結し、日本国内における同社RISC-V IP/ソリューションの販売代理店として活動を開始することになり、お客様のSoC 開発やエッジ AI 機器開発をご支援できる体制を整えました。
🎯 本稿の目的
本稿では、RISC-V が注目される理由を技術的・ビジネス的観点から分析し、従来のプロセッサアーキテクチャとの違いや、なぜ今多くの企業がRISC-Vに注目しているのかを分かりやすく解説します。
〜 オープンソースハードウェアの新時代を共に学びましょう 〜
1. RISC-V(リスク・ファイブ)の核心を3行で!
- 命令セット(ISA)が完全オープンで、誰でも自由に参照可能
- RISC-Vはオープンコアで、クローズドコアに対して費用が安価
- 拡張が自由 ─ 必要な機能だけを組み込み、差別化しやすい
※ポイント:RISC-Vは「無料で読める基礎レシピ本」。誰でも土台を学べ、地域の食材(用途)に合わせて自在にアレンジできる。
2. “今” 追い風が吹く 3 つの理由
追い風 | 内容 |
---|---|
①コスト最適化 | IP ロイヤルティが不要なうえ、必要最小限の回路面積で実装できるため、(SoCチップ本体+周辺部品)のトータルBOMコストを抑えやすい。 |
②エコシステム急拡大 | 2024 年の RISC-V チップ市場は16 億ドル、2033 年には106 億ドル超へと年率25%で成長予測。開発ツール、OS、ミドルウェアが続々充実。 |
③地政学リスク分散 | 中国政府が国産化を後押しするなど、各国で"脱特定ベンダー"の機運が高まり、公的支援にも波及。 |
3. 技術ビギナー向け:ARM と何が違う?
項目 | ARM | RISC-V |
---|---|---|
ISA の公開度 | ライセンス購入者のみ閲覧可 | だれでも無料で閲覧可能 |
拡張性 |
原則不可 (Arm Ltd. が管理) |
ベース ISA + 任意の拡張を追加可能 |
ライセンス費 | 初期+ロイヤルティが発生 |
ISA利用は無料 (実装 IP を有償購入するケースあり) |
エコシステム | 30 年以上の成熟実績 |
急成長中 組込み~HPC まで範囲を拡大中 |
※イメージ: Arm は完成品 PC、RISC-V は DIY PC 用の「規格」が無償公開されているイメージ。必要なパーツだけ選んで組める。
4. 活用シーンと具体例
アプリケーション | 採用理由 | 例 |
---|---|---|
超低消費電力 IoT
|
最小実装でμW クラス待機電力 | スマートメーター、ワイヤレスセンサ |
車載 ADAS/自動運転
|
独自機能(セーフティ島、AI アクセラレータ)をワンチップ化 | 次世代 ECU、ゾーンコントローラ |
AI/エッジ推論
|
ベクトル/カスタム命令で高速化 | スマートカメラ、産業ロボット |
高性能サーバ
|
多コア化やチップレット構成に適合 | HPC、ストレージコントローラ |
5. Andes Technology と当社が提供できること
・即戦力 IPコア
32〜64bit、ローパワーからハイパフォーマンスまで各種IPコアを取り揃え、
Nシリーズから Linux 対応 AX シリーズまで
・設計~検証のワンストップ支援
Andes 公式ツールチェーン+FPGA プロトタイピング環境
・日本語ドキュメント/技術サポート
国内窓口として、導入前 PoC から量産立ち上げまで一貫サポート
6. まとめ
- RISC-V は「自由度」と「コストメリット」を同時に実現するオープン ISA
- 市場とコミュニティが急速に拡大──今取り組むことで数年後の差別化が可能
- Andes IP + 当社サポート で、“初めての RISC-V” も安心して着手できる
7. 次回予告

📚 連載コラムについて
〜 RISC-V/Andes Technology 深掘りシリーズ 〜
第2回 本記事
なぜ 今 RISC-V なのか?――オープン ISA が切り拓く半導体開発の新常識
次回は「なぜAndes Technologyなのか」と題し、日本で広がるRISC-Vの波、日本企業がAndesを選ぶ5つの理由、製品カテゴリ別の最適Andesコア、導入のしやすさ、成功事例を掘り下げます。どうぞご期待ください。
✨ 次回もお楽しみに! ✨