【コラム記事】どうして? 鉄鋼のJFE商事グループに半導体ビジネスがある理由
JFEというと「鉄」を連想される方は多くいらっしゃると思います。鉄鋼系商社であるJFE商事グループに、なぜ半導体を取り扱う当社(JFE商事エレクトロニクス)があるのか。本記事では、その理由に迫ります。
鉄鋼系商社が半導体部門を持つ理由とは
鉄鋼メーカー各社が半導体事業に参入
新たな活路"IBM社のビジネスパートナーに"
技術サポートも手掛ける商社"JFE商事エレクトロニクス"の誕生
技術力を武器に"コトビジネス"強化を目指す
まとめ>
話者紹介
―――今回は鉄鋼系商社であるJFE商事グループにエレクトロニクス商社の半導体部門がある理由と、商社にエンジニアが多数在籍している理由について回答いただくため、柳澤社長をはじめ、半導体事業部としてDS営業本部の澤田本部長、そして山形技術部長にお越しいただきました。本日はどうぞ宜しくお願いいたします。
**柳澤社長**澤田さん**山形さん**
よろしくお願いします。
<鉄鋼系商社が半導体部門を持つ理由とは>
―――では早速ですが、なぜ鉄鋼系商社:JFE商事のグループに、半導体を扱うJFE商事エレクトロニクスがあるのか。その理由についてお伺いしていってもよろしいでしょうか?
**柳澤社長**
はい。結論から申し上げると“JFE商事エレクトロニクスは、半導体事業に踏み出した川崎製鉄とつながりを持つから” ということが、その理由の大枠に挙げられます。
半導体製造イメージ図
―――川崎製鉄と川鉄商事という会社が、現在の半導体部門につながるわけですね。
**柳澤社長**
そうです。まず、今でいうJFEホールディングスは、もともと鉄鋼メーカーの川崎製鉄と日本鋼管(NKK)という2つの会社が2002年に統合してできた会社です。
川鉄商事は、主に川崎製鉄の鉄鋼製品を扱う鉄鋼商社で、JFE発足後はJFE商事となりました。かくいう私も川鉄商事へ1988年に入社しました。
―――川鉄商事は川崎製鉄系の商社であり、柳澤社長もその川鉄商事に入社されたと。
**柳澤社長**
はい。この1980年代というのは、川崎製鉄をはじめとした国内の鉄鋼メーカーにとって、ひとつの大きな転換期にありました。「事業の多角化」という大きな流れの中で、国内の鉄鋼メーカー各社が半導体事業に踏み出したのです。
そして、川崎製鉄がつくったものを販売することが川鉄商事の機能の一つだったので、川鉄商事が川崎製鉄と同じく半導体事業の道を歩むことになりました。なお、半導体事業のために、川崎マイクロエレクトロニクスという別会社が設立され、拡大していきます。川鉄商事の半導体事業は、川崎製鉄グループの同事業の拡大に合わせて成長していくことになります。
ちなみに川鉄商事で半導体事業を本格的にスタートしたのが1988年。まさに私は、川鉄商事の半導体事業1期生でした。
<鉄鋼メーカー各社が半導体事業に参入>
―――そもそもの話題となりますが、鉄鋼メーカー各社はなぜ半導体事業へ進出したのでしょうか?
**柳澤社長**
私の認識としては、素材産業であり装置産業でもある製鉄事業での経験が「半導体製造」に応用出来る可能性ありと判断していたのではないかと考えています。
―――「鉄を"つくる"」と「半導体を"つくる"」。どちらも”ものづくり”という点で、類似性があったから、ということですね。
**澤田さん**
そうですね。産業として類似性もあると当時は考えられており、さらに1980年代当時の日本には半導体の市場も技術もありました。国内メーカーで生産された先端の半導体は、国内に留まらず、世界のメーカーで消費されるくらいの勢いがあり、活況だったんです。
対して鉄鋼は成熟し頭打ちになりつつありました。そこで「多角化」を打ち出したわけです。しかし結果的には、川崎製鉄を含め、鉄鋼メーカー各社は半導体から撤退することになります。
**山形さん**
2000年代に入り、主力製品の価格競争の激化やリーマンショックを経て需要が激減してしまったことなどから、厳しい状況に立たされました。そうした流れの中で、川崎製鉄は当時運用していた半導体工場の閉鎖を決断することに至りました。
―――川崎製鉄における半導体工場の閉鎖。これは当時の川鉄商事にとっても、少なからず影響があったのではないでしょうか?
**柳澤社長**
そうですね。川鉄商事の半導体事業も非常に大きな転換期となりました。今でも鮮明に覚えていますが、澤田(当時・川崎マイクロエレクトロニクス)から「工場を閉めることが決まった」と言われた時は衝撃でしたね。
川崎製鉄における半導体工場の閉鎖は、川崎製鉄と共に半導体事業を展開していた川鉄商事にとって、主要仕入先の事業収益が非常に厳しいことが認識された訳ですから。
しかし時を同じくして、新たな道に進む偶然の出会いもあったんです。それが、IBM社の半導体事業部門(現グローバルファウンドリーズ社)からいただいた「ファウンドリー事業を一緒にやらないか」という相談でした。
<新たな活路"IBM社のビジネスパートナーに">
―――川崎製鉄の半導体事業が節目を迎えたのと同時に、川鉄商事には新たにIBM社からファウンドリー事業の相談があったと。
**柳澤社長**
澤田から連絡をもらったタイミングと全く同じだったこともあり、私たちとすれば「IBM社のファウンドリー事業もやってみよう」という想いがありました。これまで培ってきた半導体事業のノウハウもあったわけですからね。そうして、これまでの事業を継続しながら、新たにファウンドリー事業を始めることを決めました。
―――IBM社のファウンドリー事業のビジネスパートナーになれた決め手はなんだったのでしょうか?
**柳澤社長**
ひとつは、技術力だといえます。というのも、当時のIBM社が求めていたのは、単純な販売チャネルではなかったからです。
デザインセンターリセラー(Design Center Reseller:DCR)という言葉に表されているように、デザインまでできる(技術的なサービスをできる)商社を、当時のIBM社は求めていました。
―――ただ「モノを仕入れて販売する」だけでなく、「技術的なサポートまでできる商社」という点がファウンドリー事業をスタートするきっかけになったということですね。
<技術サポートも手がける商社"JFE商事エレクトロニクス"の誕生>
―――ファウンドリー事業を開始したのが2009年。そして「JFE商事エレクトロニクス」として新たにスタートしたのはこの後ですね。
**柳澤社長**
そうです。川鉄商事のエレクトロニクス事業として別々に存在していた、表面実装機販売等の川商エレクトロニクスと半導体部門より独立した川商セミコンダクターが、2011年に統合したことで現在の当社「JFE商事エレクトロニクス」が誕生しました。
―――まさに川鉄商事からの流れが、現在のJFE商事エレクトロニクスの半導体技術力につながっているのですね。
**柳澤社長**
そうですね。特に半導体事業(DS営業本部)で本部長を務めている澤田と技術部長を務めている山形も川崎製鉄半導体事業の出身者です。
現在のJFE商事エレクトロニクスになる前は、同じ川崎製鉄系列の会社ではありますがそれぞれ別の会社で働いていました。しかし、より半導体事業の技術力を高めていきたいという想いから澤田には2020年に、山形には2021年に当社へジョインしてもらいました。
―――当時から、同じフィールドで助け合ってきた仲間と、再びJFE商事エレクトロニクスという場所で集結したわけですね。
**柳澤社長**
澤田が本部長を務めている当社の半導体事業(DS営業本部)の強みは、まさに山形チームです。
というのも、山形を筆頭に、元川崎マイクロエレクトロニクスや元IBM、元グローバルファウンドリーズなど、高い技術力を持ったICベンダー・チップメーカーの第一線で働いていたエンジニアたちが集結してくれています。
そのエンジニアたちが、お客様に技術サービスを提供しているのが、当社の特徴ですね。
―――いずれも有名なICベンダー・チップメーカー出身の方々が集まっているわけですね。
**柳澤社長**
はい。このようなエンジニアがいるからこそ、普通のディストリビューターや商社としての機能だけではなく、エンジニアリングサービスまで提供していけるのです。
<技術力を武器に”コトビジネス”強化を目指す>
―――高い技術力を持ったメンバーが集まった今、次はどのような展開を考えているのでしょうか?
**柳澤社長**
大きく2つの展望があります。ひとつは、川鉄商事の時代から取り組んできたASICの分野をさらに伸ばしていくことです。
もともと当社は、ASICやファウンドリーなど、基本的にカスタム品に注力してきました。だからこそ、これまでカスタム品の製品を立ち上げてきた技術力を、継続的にさらに強くしていきたいと考えています。
―――ファウンドリー事業といえば、グローバルファウンドリーズ社のパートナーとして、最高位の"プラチナ"に位置していると記憶しています。これをさらに伸ばしていきたい、ということですか?
**柳澤社長**
はい。当社がグローバルファウンドリーズ社から"プラチナパートナー”の評価を受けている理由は、やはりエンジニアがいて、技術力を持っているからです。
そのためこの技術力をさらに発展させて、日本はもちろん、台湾などアジアなど世界の市場にも拡大していきたいと考えています。
―――実際に評価を受けているほどの技術力をもって、半導体のカスタムをおこなう分野でさらなる発展を目指していくということですね。もうひとつの展望もお聞きできますか?
**柳澤社長**
はい。もうひとつは、「Silicon Integration Service(SIS)」というサービスを拡大していくことです。
SISは、お客様の要望に合わせてウエハーをカットしたり、パッケージングしたり、テストをしたり…といったウエハーに関わる工程を、ワンストップで提供するサービスです。
国内や海外のパートナーとも連携することで、ウエハー単体だけでなく、お客様に納めるところまでを包括して提供することを可能にしています。
―――これは、"モノを仕入れて、販売する"という機能だけでは実現できない、まさに技術力があってこそ可能になるサービスですね。なかなか真似できるものではないように感じました。
**柳澤社長**
そうですね。当社には優秀なエンジニアたちが集まってくれているので、その技術力をさらに広めていきたいと考えています。いわゆる「モノ売り」だけではなくて「コト売り」ですね。
半導体事業であるDS営業本部では、当社でしかできない技術的な強みを持ってお客様に製品を提供していくことに注力していきたいと考えています。
まとめ>
鉄鋼メーカーにおける多角化の流れの中で、川崎製鉄と共に半導体事業に踏み出した川鉄商事。その川鉄商事をルーツに持つJFE商事エレクトロニクスの半導体部門。中でも、有力な半導体エンジニアが多数在籍しているからこそ可能な技術サポートサービスは、あなたが半導体で抱えている課題を解決できるかもしれません。「サービスについて詳しく知りたい」「相談だけでもしてみたい」という方は、下記問い合わせフォームからご連絡ください。