半導体業界は、テクノロジーの進化とともに絶えず変化してきました。半導体メーカーとしてのIDMに加え、ファブレス・ファウンドリといったビジネスモデルが誕生したことも業界においては大きな転換点といえます。本記事では、そんな半導体業界を取り巻く変化についてご紹介します。
1.ファブレス、ファウンドリの誕生
半導体ビジネスにおいて、当初は「IDM(Integrated Device Manufacturer)」と呼ばれるビジネスモデルが主流でした。IDMは、半導体の設計から製造までを一手に担う統合垂直型の半導体ビジネスモデルです。この一気通貫型のビジネスモデルがメインだった理由には、半導体の開発には大規模な投資が必要とされるため、巨大な資本を持つ大企業がすべてを内製していたことが挙げられます。
そんな中、「ファブレス」と「ファウンドリ」という新しい2つのビジネスモデルが1980年代後半に登場しました。「ファブ(工場)+レス(なし)」という名称からわかるように、ファブレスは工場を持たずに設計に注力する半導体ビジネスモデルです。ファブレスとは真逆で、ファウンドリは製造に特化した半導体ビジネスモデルといえます。
これらは、IDMが直面していた製造設備や技術開発に対する投資コストの巨額化という課題を解決するためのビジネスモデルとして誕生しました。ファブレスは、工場を持たないことで巨大な資金投下なしに半導体事業への参入を可能に。ファウンドリは技術開発と設備投資のリスクを負い、一方でファブレスはLSI自体の企画やマーケティングに関わるビジネスリスクを負うといったリスク分担を可能にしたのです。
<半導体業界における主要な業態と主な企業例>
業態
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特徴 |
企業例 |
IDM |
設計から生産まで一貫して自社でおこなう企業 |
インテル、サムスン、ルネサスエレクトロニクス、STマイクロエレクトロニクス |
ファブレス |
設計に特化し、生産は完全に外部へ委託する企業 |
QUALCOMM、NVIDIA、AMD、MediaTek、 メガチップス |
ファウンドリ |
設計はおこなわず、主に他企業から依頼を受けて製造をおこなう企業 |
TSMC、UMC、GlobalFoundries、SMIC |
2.電子機器の普及で爆発的な成長を遂げる半導体市場
ファブレス・ファウンドリといった業態が大きな成長を遂げたのは、1990年代後半から2000年代頃のことでした。この年代にモバイル電子機器が爆発的に普及したことで、半導体市場の競争はさらに激化することになります。
半導体市場の競争激化を受けて、工場への投資コストの削減と技術進化スピードに対応できるビジネスモデルとしてファブレス・ファウンドリはさらに注目されることとなりました。実際に、1995年以降で世界の半導体売上に占める割合は右肩上がりで成長を続け、最近ではファブレスの売上高は半導体全体の30%を占めるともいわれています。
半導体を必要とするパソコンの普及、そして携帯電話といったモバイル電子機器の普及が、半導体市場の変化を後押ししたといえるでしょう。
まとめ>
半導体業界は、社会の技術的要求や市場の変化に応じて、その業態やビジネスモデルを進化させてきました。今後も様々な社会情勢や技術進化のスピードに合わせて半導体業界の変化は続いていくでしょう。
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