半導体の製造工程には、「前工程」と「後工程」という名前が登場します。
半導体の前工程は、「シリコンウェハー上に電子回路を作り込む一連の工程」であり、成膜・リソグラフィ・不純物拡散などの複数の精密なプロセスを繰り返して、最終的な半導体デバイスの基礎を作る重要な段階です。
しかし「具体的にどのようなことをおこなっているのだろう?」と疑問を持たれている方もいるのではないでしょうか。本記事では、そんな「前工程」について、具体的におこなわれている内容についてご紹介しています。
目次
前工程は大きく分けると3段階
半導体製造の前工程は、大きく分けると「成膜工程」、「リソグラフィ」、「不純物拡散工程」の3段階でおこなわれます。半導体デバイスの性能を大きく左右する重要な工程のため、その概要と各工程の役割について詳しく解説します。
1.成膜工程の役割と膜の種類について
成膜工程は、半導体の材料であるWaferに非常に薄い膜を形成する工程です。形成される膜としては、電気を通したり、通さなかったりといった性質に関与します。
主な膜の種類としては、次の3つが挙げられます。

また主な膜の形成方法は、下記3つです。

2. リソグラフィ工程の流れとポイント
リソグラフィは、半導体デバイスの微細なパターンをWafer上に転写するための工程です。これにより、絶縁層や金属配線などの形状を精密に制御することが可能になります。
リソグラフィの流れ
リソグラフィは、電子回路のパターンをWaferに写す工程です。「レジスト(感光剤)の塗布」、「露光(転写)」、「現像」、「エッチング」、「レジスト除去」という一連の流れでおこなわれます。早速それぞれの内容について見ていきましょう。
①レジストの塗布
エッチング時の保護膜となる感光性のレジストをWaferの表面に均等に塗ります。
②露光(転写)
電子回路が描かれたフォトマスクとレンズを重ね、Waferに光を当てます。これによりレジスト膜へフォトマスクに描いた電子回路を転写します。
③現像
Waferを現像液に浸して光に当たった部分のレジスト膜を溶かす*ことで、薄膜の層が現れます。この工程で溶けずに残った感光剤はレジストマスクと言います。
*レジスト(感光剤)の種類には光が当たらなかった部分が溶けるものもあります。
④エッチング
酸化膜に対してイオンビームを当てて削り取り(エッチング)、フォトマスクが重なっている部分だけが残ります。
⑤レジスト除去
フォトマスクも除去することで、転写された電子回路のパターンだけを残します。
これらの一連のステップを通じて、半導体チップの基礎が作られます。
3. 不純物拡散工程の仕組みと方法
Waferに対して不純物(ボロンやリンなど)を添加することで、N型またはP型半導体*の領域を作る工程のことを不純物拡散工程と呼びます。主な方法としては次の2つです。

*N型半導体、P型半導体について知りたい方は、下記記事もご参考ください。
「半導体の名前の由来とは?」
ここまでが半導体の機能部分を担っている製造の前工程です。
前工程が半導体の機能を作り出す
本記事では、半導体製造における前工程について、それぞれの工程の詳細についてご紹介しました。半導体の機能を形づくっているのは前工程だということがわかりましたね。半導体についてもっと知りたい方は、ぜひ当社の他コンテンツもご覧ください。