デジタルを活用するのが当たり前の現代において、無くてはならないもののひとつが半導体といえるでしょう。そんな半導体分野で、日本がかつて隆盛を極めていた時期がありました。しかし現在はシェアを落としています。この変化はどのようにして起こったのか。本記事ではその背景として、半導体分野の産業構造の変化についてご紹介します。
目次
1.日本も世界で脚光を浴びた「垂直統合型」の時代
今では生活に欠かせない半導体。かつて日本も世界的なシェアを誇り、世界で活躍する半導体は“日の丸半導体”と呼ばれ、注目の的となった時代があります。
隆盛を極めていたのは1980年代後半のこと。1988年には日本が半導体の世界シェア50.3%を占め、まさに世界を牽引していたともいえるでしょう。
しかし、下記のグラフからもわかるように、1990年代からは徐々にシェアは世界に追い抜かれていくことになりました。
(出典)経済産業省(2021.3.24)「第1回半導体・デジタル産業戦略検討会議」
この劇的な変化の背景には複数の原因がありますが、その一つに半導体産業の構造が大きく変化したことが考えられます。
当時は、半導体の設計から製造、販売に至る一連のプロセスを自社内で一手に担う垂直統合型の企業(IDM)が主流でした。資本と専門技術を持った大企業が主導で、半導体の製造がおこなわれていたのです。
2.「水平分業型」時代の到来
大手企業が主導する垂直統合型によって半導体産業は成長しましたが、同時に企業間の競争も激化し、勝ち負けの明暗が事業戦略を左右するようになりました。そんなさなかに新たな産業構造として水平分業型の企業が台頭してきました。
水平分業型の特徴は、設計・製造・販売といった半導体産業の各プロセスが、それぞれを専門とする、例えば、ファブレスやファウンドリーと呼ばれる企業に分割される形にあります。垂直統合型である程度の技術が確立されてきたからこそ、製造に特化した企業や設計に特化した企業が市場に参入し始めたのです。
技術の進化がものすごいスピードで進む半導体技術の開発には、莫大な投資が必要です。つまり垂直統合型では、この技術革新に遅れを取らないように、常に大規模な投資が求められることになります。
その点で水平分業型は、投資コストを抑えながら最新の技術レベルを維持できるメリットから業界全体に浸透していき、半導体技術のさらなる競争激化を引き起こすことになります。
3.現代の半導体産業構造について
分野を特化した水平分業の企業は、迅速な判断のもと集中投資をして最新の技術をいち早く得るため、垂直統合型企業の従来の投資レベルでは、これまでと同じように変化に対応することが困難となっていきました。
当時の日本企業も変化への対応を試みたものの、企業の一部門として存在していることが多かったこともあり、コストが嵩んでしまう半導体事業から次々に撤退していくことになりました。
こうした流れの中で、垂直統合モデルで生き残っているのは超巨大資本を持つ企業のみに。そして、自社では工場を持たないファブレス企業や、受託製造を担うファウンドリー企業などが業界をリードしていく現代の半導体産業の構造につながっていきました。
まとめ>
日本もかつては世界的なシェアを誇った半導体産業。本記事では、その半導体産業の構造がどのように変化してきたのかについてご紹介しました。
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