【半導体業界知識】世界で健闘し続ける日本の半導体製造装置メーカー・材料メーカーとは

 

世界シェア1位を獲得するなど一時代を築きながら、現在は大きくシェアを落としている日本の半導体業界。しかし、実は同じ半導体業界においても製造装置メーカーと材料メーカーは、今もなお世界トップクラスに位置しています。本記事では、世界で健闘している両分野について、なぜ世界で健闘できているのかといった理由も交えながらご紹介します。

半導体製造装置メーカーとフォトレジスト

目次

 

 

1.半導体製造装置メーカー・材料メーカーとは

高い機能を持った半導体を製造するには、それだけ複雑な工程と高度な技術が求められます。その点で特定の装置や材料のメーカーは、半導体の製造において大きな役割を担っています。

製造装置メーカーは、文字通り半導体の製造に必要な装置を提供する企業です。たとえば国内の有力企業 東京エレクトロンは、半導体の製造工程で用いられるコータ/デベロッパやエッチング装置において世界的メーカーの1社に数えられます。 これらの装置は、微細な回路を正確に半導体上に形成するために欠かせない存在で、その精度や信頼性は世界から高い評価を受けています。 

また材料メーカーは、半導体の製造に必要な化学物質や材料を提供する企業です。たとえばフォトレジストにおいては、世界シェアの9割を日本企業が占めており、国内企業のJSRと東京応化工業で世界シェアの5割以上誇っています。 半導体の製造に必要なレジストやシリコンウェハといった材料は、半導体の性能や耐久性に影響を及ぼす点で非常に重要な役割を果たしています。

フォトレジストメーカー 世界シェア

※出典元:菊池正典『半導体産業のすべて』、ダイヤモンド社、2023年出版
※出典元:経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略」

このように、半導体の製造装置メーカーや材料メーカーは半導体を根底から支えている存在であり、複数の日本企業がそれらの分野で活躍しています。


 

2. 国内企業が世界で健闘できている理由

次に、なぜ国内の製造装置メーカーと材料メーカーが世界を舞台に健闘しているのか、その理由を見ていきましょう。

製造装置メーカーと材料メーカーは、いずれも世界的に類似した立ち位置にいます。製造装置メーカーを例に2021年時点売上高ランキングを見ると、 日本企業はTOP10の内6社がランクイン。4位に東京エレクトロン、6位にアドバンテスト、7位にSCREEN、9位にKOKUSAI ELECTRICなど、計4社が世界TOP層で確認できます。

順位

企業名

1

AMAT(米)

2

ASML(蘭)

3

ラムリサーチ(米)

4

東京エレクトロン(日)

5

KLA(米)

6

アドバンテスト(日)

7

SCREEN(日)

8

テラダイン(米)

9

KOKUSAI ELECTRIC(日)

10

ASMインターナショナル

 

※出所:VLSI Research/Tech Insights

この健闘の要因として考えられるのは、主に下記の2つです。



2-1.技術力の高さ

製造装置は非常に高い技術を必要とします。日本は、かねてより“製品の品質をいかに高めるか”にフォーカスすることを得意としてきました。また国民性もあってか、丁寧できめ細やかな作業において、世界的な評価を受けていると考えられます。



2-2.経験値の高さ

構造や装置のあり方自体が大きく変化しにくい製造装置は、品質と信頼性が重要視される傾向があります。だからこそ日本のメーカーは、新興のメーカーよりも長年の経験によって培われた深い知識や技術に大きな強みを持つ点で、優位性を保っているのです。

このように、装置や材料の品質において高い技術力と豊富な経験に基づき厚い信頼が寄せられていることから、日本の製造装置・材料メーカーは世界で健闘を続けています。

 

 

3.今後予想される展開とは

国内の半導体製造装置・材料メーカーは、多くの新興メーカーに無い長い歴史と蓄積されたノウハウ、そして精密な技術があることで世界の半導体業界で一定の地位を維持していることをご紹介してきました。

しかし、世界の半導体業界は日々変化し続けており、韓国・台湾・中国を中心にAMECやSMIC、NAURAなど新興企業が実力を伸ばしてきています。

サムスンやTSMC、ファーフェイなど各国の世界的企業は半導体の設計から製造に至るまでの上流工程で大きな経験と影響力を持つことから、次のターゲットは下流の製造装置や材料分野だとされています。その点で、現在の地位に甘んじることなく、より一層の技術力の底上げとイノベーションを目指すことが、日本の半導体産業の発展へと続く道のりといえるでしょう。

 

まとめ>

日本の半導体産業黄金期から30年以上を経た今もなお世界を舞台に健闘を続けている日本企業は確かに存在します。
変化の激しい半導体業界で、長い間適応し続けてきたその技術力と蓄えられたノウハウがあることから、これからも活躍が期待されます。

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