2021年、半導体の前工程を担うファウンドリの世界最大手TSMCが日本での工場建設を発表したことで話題となりました。また近年では、“チップレット”と呼ばれる半導体の集積技術が注目される中で、半導体製造の後工程を担うOSATにも注目が集まっています。これらの業態は何が優れているのか、本記事ではその誕生の経緯も交えてご紹介します。
まず、ファウンドリとOSATのそれぞれの特徴について見ていきましょう。
「ファウンドリ」は、自社で設計はおこなわず、“前工程”と呼ばれる半導体のプロセス開発や製造をメインにおこなう企業です。代表的なファウンドリには、TSMC(台湾)やサムスン電子(韓国)、グローバルファウンドリーズ(米国)などが挙げられます。
一方「OSAT」は、「Outsourced Semiconductor Assembly and Test」の略で、半導体の組立やテストといったいわゆる半導体製造の“後工程”を専門とする企業です。代表例としては、ASE(台湾)やAmkor(米国)、JCET(中国)らが挙げられます。
ファウンドリとOSATは、それぞれが半導体製造における前工程と後工程に専門性を持ち、半導体の設計のみをおこなうファブレス企業などと協力することによって今日の半導体は製造されています。
次に、ファウンドリとOSATがどのようにして誕生してきたのか、その経緯をご紹介します。
半導体業界では当初、「IDM(Integrated Device Manufacturer)」:垂直統合型と呼ばれる半導体の設計から製造、組立、テストまで全工程を1社でおこなう業態が主流でした。
しかし、1990年代頃からデジタル機器が一般家庭へ普及するにつれ、 半導体の需要が急増。増加した需要に応えるためには生産スピードの向上はもちろん、競争に勝ち抜くためにも技術の進歩にも対応しなければならない状況がありました。
このような状況下で半導体の製造工程の効率化が進行。そして、「設計のみ」「前工程のみ」「後工程のみ」のように工程を分割した分業体制(水平分業型)が自然と構築され、現在のファブレス、ファウンドリ、OSATといった業態が誕生してきたのです。
分業化が進むことで誕生したファウンドリとOSAT。その主なメリットには、下記の3つが挙げられます。
分業化により、全体の製造コスト削減が可能です。特に現代では、微細化・集積化が進み、それを可能とするための設備投資・維持・運用には莫大なコストがかかります。その点でプロセス開発や製造はファウンドリ、組立・テストはOSATにそれぞれ任せた方が、全ての設備を一括で整える必要がないため、製造コストを抑えることにつながります。
市場の動向や需要の変化に応じて、生産量を最適化できることもひとつのメリットです。需要と供給には波があり、需要が落ち着いたタイミングで生産設備を持つには維持コストがかかります。しかし、ファウンドリやOSATを活用することで、状況に応じた生産体制をとることが可能となります。
ファウンドリやOSATは各分野に特化した業態だからこそ、プロセス開発や製造または組立・テストにおいて最新の技術や設備を持っています。そのため、自社で設備投資を繰り返さなくても、より高性能で効率的な半導体の製造をおこなえます。
まとめ>
産業が進歩を続けることで、半導体業界においても新たな技術やビジネスモデルが続々と生まれてきています。そんな中、ファウンドリやOSATによって、この変化に対応するための技術開発やサービスの拡充はさらに進んでいくでしょう。