本記事では、SOI Waferの基礎知識について解説します。まず、SOI Waferとは何か、SOI Waferが持つ特徴、最新のスマートフォンにおける半導体技術の動向についても紹介しています。
※JFE商事エレクトロニクスは、米半導体受託製造大手GlobalFoundriesのプラチナ・パートナーです。
SOI Waferは、半導体製造において使用される、Silicon Waferの一種です。
SOI とは、「Silicon On Insulator」の略であり通常のSiliconWaferとは異なる構造を持っているために、従来のSiliconWaferよりも高い性能と信頼性を持ち、特に高速・低消費電力の半導体デバイスにおいて重要な役割を果たしています。
SOI Waferは、シリコンの表面内に絶縁材料の薄い層を挟んだ構造を持ちます。その絶縁層をSOI BOX層と言い、その上に構成されたトランジスター(FET)はGNDに対して浮いている状態なので、例えば2.5Vを4つ直列に結合すると10V(2.5Vx4)相当の無線シグナルを低ひずみで取り込むことが可能となります。
また、絶縁層の上のシリコン層にトランジスタ、抵抗、キャパシターを構成し、MIPI I/F デジタル回路を含むアナログ・デジタル混在のSwitch・LNA(Low Noise Amp)機能等の回路を実現することができます。
スマートフォンなど、ミリ波帯の周波数エリアでパフォーマンスを出す必要がある製品を作りたい場合、SOI Waferを採用することでアンテナ・高周波部品・Switch・LNAデジタルのロジック制御を含めた機構において高周波性を高めることが可能です。基地局からの微弱電波を拾う性能が上がるため、シグナルクオリティが低くても良好なパフォ―マンスを実現することができるからです。
昨今の半導体を取り巻く環境では、需給逼迫、米中の技術競争が新聞の紙面を賑わせています。また、日本でもTSMC社のFabを熊本県内に建設、Rapidas社がIBM、imecと協業し、最先端2nm Gate長の半導体プロセス拠点を北海道に建設するなど大きな動きがありました。
一方、最近のiPhoeの分解図等がWeb上で公開され、この中では、TSMCの最先端CMOSテクノロジーであるGate長が4nm, 5nmのアプリケーションLSIが使用されていることが注目されることとなりました。
スマートフォンの中身を覗き見ると、様々なCHIPやModuleがあるのがわかりますが、その中でも無線通信に関わるモジュール類の数は相当なものです。
Docomo、Au、ソフトバンク、楽天等の各キャリアサービス会社は、4G/LTE・5Gなどの高速データ通信と共に、レガシーな2G・3Gの各周波数もサポートしています。
更に将来は5G、28GHzを超えて、Beyond 5G・6Gとして、subTeraHz帯(>100GHz)の検討も行われており、現在 ITUT/IEEE Working Groupで標準化が進められているなど、スマートフォンでサポートされる周波数は、益々拡大の一途をたどっています。
今はほとんど使っている人は少なくなりましたが、いわゆる「ガラ携」とよばれる従来型の携帯電話は、外側からアンテナが見えているものもありました。しかしスマートフォンにおいては、アンテナが内蔵されています。昨今では、様々なキャリア周波数帯が使われるだけでなく、Bluetooth、WiFiと無線通信部分の多様化、肥大化が進んでいるのです。
例えば、回路ブロックでみるように、無線アンテナを通して電波が発信・受信されており様々な周波数の上に縮退されたデジタルデータが高速にデータ転送されております。それが電話、映像等でのコミュニケーションの基礎となっています。当然の如く、スマホが受信(Receive)する電波は微弱であり、百万倍以上のエネルギーでスマホ内を通る電波(送信)の直ぐ近くでこの微弱電波を受信することを想像すると大変な技術であることがわかります。
下の図をみてみると、アンテナにはこれらの周波数帯をコントロールするスイッチ類(Dataの道をOn/Offするためのもの)がたくさんある事が分かります。
2G・3Gの通信の時代では、使用されるキャリアの周波数も少なく、これらのスイッチはGaAs化合物で構成されていました。またかつてはディスクリートのGaAsスイッチチップが使われていましたが、最近ではデータ速度の高速化が進み、デジタル処理とアナログ高周波対応が一体となったAnalog Mixed Signal(AMS)の Silicon SOIベースに代わっています。
その他にもSOI Waferから製造されたチップは、プロセッサやメモリ、無線通信チップなどに使用されており、より高速・低消費電力のデバイスを実現しています。
又将来に向けてスモールセル・ヘムトセル等の高速データ通信(100G~)が必要な領域では異なるタイプのSOI・Bulk Siliconや化合物半導体の特性を考慮し、Technologyの経済合理性が考慮されIEEE RFワーキンググループ等で研究がすすめられ様々な提案がなされています。日本・欧州・アメリカ・中国で、様々なメーカー・キャリアが、製品・ソリューションのサービスを展開している状況です。
映像データの送受信等、膨大なデータを扱うスマートフォンのRF(RadioFrequency)アンテナスイッチを含む機能はより複雑化し、前述したように、かつての化合物半導体からSiliconに代わってきています。RFFE(RF Front End Interface)MIPIでの複雑化されたデジタル回路を統合(Integrate)することが可能となり、より低消費電力化、小型化の実現が可能になってきたのです。
このことにより、スマートフォンのマーケットは更に進化し、Big Data、 ChatGPT、Personal AIなど、Cloud、Computing Edge Toolとして益々発展をしていきます。
スマートフォン製品はその機能の発展とともに、将来のBeyond5G, 6Gでのミリ波帯、SubTeraHz帯を使ったスモールセルとともに、より高速、大容量のデータ通信へと進化します。そしてこの領域では、化合物半導体(GaAs, GaN 等)のWide BandgapのTechnologyが再び注目がされています。デジタル・アナログの世界でのいわゆる「Heterogenous Integration(異種の統合)」 が進んでいるのです。
弊社ファウンドリー営業部ではGlobalfounndries社(以下GF)のファウンドリーサービスを展開しており、そのテクノロジーの一つとしてSiliconSOI Waferにも対応しております。
お客様が設計された回路デザインデータをお預かりしGFにて半導体プロセスしたWaferをお届けするとともに、Waferレベルのテスト、Wafer研磨、 ダイシング、Packaging、Functional Test等々のサービスも協力会社と共に、提供しています。
当社の強みはメーカー出身の経験豊富な技術スタッフが多数在籍する技術商社であることです。半導体設計と半導体製造に係わる独自のエコシステムを確立し、従来のWafer形態でのファウンドリーサービスに加え、お客様の製品開発や希望する製品形態に応じた柔軟かつ高付加価値なターンキーサービス(SIS=シリコンインテグレーションサービス)を提供しています。
・お客様の仕様からLSI設計を行い、GDSデータを作成する。
・GDSデータをFAB(GFなど)にリリースする。(お客からGDSデータを入手する場合もある)
・FABがチェックをし(マスクを起こし)半導体プロセスを実施します。
・回路が搭載されたWaferとして、お客様へお届けします。
Waferだけでなく、後工程の実施も依頼したいとお考えのお客様にお応えするサービスです。
・チップ上のテスト
・バックサイドグライディング
・ダイシング
・パッケージング
・パッケージング後の機能テスト
・パッキングの梱包
・完成品としての出荷
最終的な梱包まで完了した完成品としてお届けします。まだ仕様が決まっていないなどの、あいまいな状態からでも、具体的なご提案をさせていただきます。これは半導体の前工程から後工程までを担当できる技術者を抱えている当社ならではのサービスとなります。